なろうダラ読み感想記

主に『小説家になろう』で面白かったWEB小説の感想をぼちぼち。コメディ・アクション寄り。俺TUEEEとかノリがいい物多めです。良い厨ニ大歓迎。

冷笑主義

[吸血鬼][主人公最強][ヨーロッパ歴史][ヴァチカン][教皇][平らな目][コメディ][シリアス]

作者:不二 香

──滅ぼせるものなら、滅ぼしてみろ── ゴシック・バロックな人々でおくる、短編連作中世ヴァンパイア・シリーズ。 時は15世紀後半暗黒時代、南フランスの片田舎に1匹の吸血鬼が住んでいた。 名は、シャルロ・ド・ユニヴェール。 吸血鬼の弱点をことごとく凌駕したこの麗人、ローテンションな灰色メイドと愉快な仲間たちを従え今日も行く。
(自サイト公開済作品):春眠堂(冷笑主義)

主人公    ★★★★★
サブキャラ  ★★★★★
不死身度   ★★★★★
物 語    ★★★★★
文章構成   ★★★★★ 

 

コミカルパートとシリアスパートのバランスがとても良くて面白いです!
腕の修復方法を忘れたり、悩んでいる間にうっかり殺されたりとコミカルな反面、戦火を煽ったり、教皇を暗殺したりとダークでもあります。


一押しはジェノサイド編ですね。どうして不滅の吸血鬼が誕生したのか、そしてそれを滅するにはと、シリアスな内容ですがぐんぐん引き込まれます。出てくる人物は皆一癖も二癖もあって、まず生粋の善人はほぼいません。
また、歴史にそった構成になっているので、世界史に強い人はより面白く読めると思います。

 

GENOCIDE-5. アデュー
“彼はただ、嫌悪と寒気に眉をひそめただけだった。
 ユニヴェール家そのものの裏切りに、何ひとつ思わない自分への寒気。
「シャルロ・ド・ユニヴェール。自らの母君を手におかけなさるとは、力も最強なれば狂気もまた尋常ではありませんな」
 しらじらしく、叔父が言う。
 その手でふたりの首を刎はねたくせに。
「ここで罪人を刑に処するのと、教皇庁に引き渡すのと、どちらが良いと思うかね、皆!」
教皇庁は駄目だな。甘い」
「血は断絶させなければならないと思うが」
「これは我々の家のこと、教皇に介入させる理由はないだろうて」
 後ろの者達が口々に意見を述べる。
 だが主旨は皆同じだった。
 ──今ここで当主を殺せ、と。
「母を殺した罪を着せ、私を消そう、と」
 雨粒にぼやける窓ガラスの向こう、“ユニヴェール”の持つ民兵たちが城門の外に隊列を作っているのが見えた。
 錆びた鉄の鎧に雨の飛沫が飛び、掲げられた槍の穂先に水が流れている。
 彼らは降りしきる雨の中、静かに門を固めていた。
 主が、逃げ出さないように。
 
 屋敷が沈黙で隠していたものは、これだったのだ。
 自分の城にまで裏切られた。
 なんだか、笑える。

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