鬼ノ鉄兵 ~ その大怪獣は天空の覇王を愛していた ~
[主人公最強][筋肉は正義][脱衣][鬼化][魔物化][悪食][航空船][浮島][SF?][シビア][シリアス]
作者:かすがまる
目が覚めると巨大スズメバチに運ばれていた。喰われる前に死のうと思った。灰色で泥まみれで化物だらけの地上。救われて上がった天空は、色とりどりの髪と瞳がまばゆい魔法の世界。けれど楽園とは違う。違ったんだ。//魔法万能世界でただ1人魔法無能の主人公は、頻繁に脱衣しつつ次第に化物と化し、やがては討伐軍が編成される。それを指揮するのは……彼の最愛の女性。
主人公 ★★★★☆
サブキャラ ★★★★☆
人 外 ★★★★★
物 語 ★★★★☆
文章構成 ★★★★☆
人間がそのままでは人を維持できない世界で目覚めた主人公の戦記です。
一人称スタイルの軽い語り口なので鬱っぽさはないものの、シビアな世界観で、結構子供が死にます。
人の命が軽視されている社会、精霊と契約ができない者は人でさえもいられない現実。いずれ自分も同じ化け物になることに諦観を感じながらも、己を定めて理不尽な世界と戦って行く物語です。
ちなみに主人公マッチョになります。脱ぎます。無駄に脱ぎます。
第7話 無要
「……銘 は、どうするんだ?」「要らない」
何を言うかと思えば。生き物を殴り殺すための棒に、何が名前だ。
いや……でも、そうか。この鍛冶師からすればこれも作品なのか。
無から有を産んだことに違いはない。死が死を産むだけでも。
「『無要』。この名で」
「わかった。その二文字、刻ませて貰うぞ」
これまでの騒音と比べれば、無音と言っていい小さな音をたてて、刻む。
考えてみれば残酷な銘だ。必要が無い、というのは死よりも酷薄だから。
生命は孤立できない。生も死も、大きな流れの中に関連している。
……俺には相応しいかもしれない。
この世界を必要としてない。この世界から必要とされていない。
そんな立ち位置で義務にかられているだけの、俺には。
「行くのか」
「ああ」
「本当に……必要ないのか?」
「ああ、必要ない」
そうさ、必要ない。俺にはこの肉体がある。確かな現実として、ある。
それ以上何を望む必要があろう。これほどわかりやすい「自分」はない。
自分探しなんて簡単だ。触ればそこに、鏡を見ればそこに、存在する。
「……せめて、これだけは持っていけ。最後の忠告だ」
「……わかった」
わずかな間でも仕事を共にした仲間であり、技を借りた師でもある。
その忠告には従いたい。俺は、言われるがままに――――パンツをはいた。
暑くて暑くて、もう、蒸れて仕方なかったんだがなぁ。
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