ヤクザな退魔
[現代ファンタジー][ヤクザ][おっさんしかいない][まほうじゃなくて祝詞][怪魚][微ホラー][コメディ]
作者:モロクっち
比嘉笙矢という名前の34歳東京都民はヤクザである。指定暴力団関東門倉会の二次団体、黒澤組の組員だ。34にもなっていまだに幹部にしょっちゅうどつきまわされている、しょーもない下っ端である。なんで毎日のようにブッ飛ばされているのかというと、たまに息をすることさえめんどくさがる究極のものぐさだからだ。おまけに口答えとよけいなツッコミが多い。ケンカも弱いし顔にも体格にも迫力がない。それなのに、笙矢が組長や幹部から愛想を尽かされるどころか、面白いやつだと一目置かれているのには、和風ファンタジーな理由があった。――比嘉笙矢という34歳暴力団員は、まほうがつかえる。わけのわからない呪文とわけのわからない鯉みたいな魔物を使って、ユーレイやヨーカイを退治できるのだ。「……だから呪文じゃねえすよ。祝詞です」//通称『新ヤク』。2005年~2006年に作者のサイトにて更新していた短編連作『ヤクザな退魔』を、某出版社様から書籍化のお誘いを受け、商業誌用として大幅に加筆し、内容を再構成したものです。書籍化のお話がお流れになってしまったため(またか! でも今回は作者がワガママ言ったせいです)、無料公開いたします。本作の骨子となった『旧ヤク』も当面webに残しておきます→http://molock.sakura.ne.jp/koi/top.htm
主人公 ★★★★★
サブキャラ ★★★★★
ヤクザ ★★★★★
物 語 ★★★★★
文章構成 ★★★★★
ヤクザなおっさんしか出て来ない現代和風ファンタジー(笑)です。
徹頭徹尾出て来るのはヤんぞ!ごらぁっの恐いおっさんばかりww
しかしいくら恐いヤクザといえどもユーレイは怖い訳で、そんなヤクザも怖がる曰くつき物件をお祓いしながらぐうたら昼寝生活を送るのが元・浄階特級神職のおっさん比嘉笙矢34歳。
テンポが良くて読みやすく、ヤクザ×神職のからみが笑えて面白いです!
第壱話 まがつ鯉
“もういかにもヤクザ。しかもアクション系ラノベのチート主人公に3秒でノックアウトされそうなヤクザ。そんな容姿の男たちが数名、ニヤニヤ――もといニコニコしながら笙矢の前に立ち、頭を下げた。彼らは全員黒澤組の若い衆だった。
ほぼ常に寝ていると言っても過言ではない笙矢だが、なんとこうして頭を下げられる身分なのだ。
「フヘヘ、オヤブンいたでしょ」
「いたよ! もー、来るんなら教えてくれよなー。つーか起こせよぉ」
「すんません。フヒヒ」
「本部長に『ほっとけ』って言われたんで。デュフフ」
――わざとかこいつら。ったくもー。
だが同時にこうしてナメられることもある身分なのだ。現実は厳しい。
「力仕事任されたんだって?」
「はい。でももう終わりました」
「若頭カシラと本部長は?」
「そろそろ来ると思います。カシラはオヤブンとまたすぐ出かけるらしいですけど。――比嘉さん、これからどっか行くんですか?」
「うん。仕事。おれも任されちったよ」
あくび交じりに言うと、若い衆たちは顔を見合わせた。ちょっと青くなった者もいる。しかし、この中で最も度胸のある組員が、まじめくさった面持ちで言ってきた。
「俺、車回しましょうか? お供しますよ」
「いーよ。おまえ今目の前通ったやつみえなかったろ? そんなんじゃおれの仕事の邪魔ンなるだけだよ」
「うえッ!?」
「ひいッ!?」
いい年したイカツイ男たちが、ほぼ全員青褪めて飛び上がって一部は抱き合った。ふひっ、と今度意地悪く笑ったのは笙矢のほうだ。
「冗談だよ。嘘。このへんにはいねーから。――んじゃ、カシラと本部長によろしく言っといてくれ」
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