拝啓ニンゲンども、魔王城より
[主人公最強][勇者][ギャン泣き二重人格魔王][ナマニク][尻][コメディ]
作者:赤井 紅介
幼女みたいな魔王に目潰しをされ、鼻の穴を一つに繋げられ、全身の関節を曲がらないほうに曲げられ、ケツの穴を一つ増やされ、あまつさえサービスにケツの割れ目を横にまで作られて敗北した人類最強の勇者アルカン。
心をポッキリ折られて逃げ帰った彼に下された王の命令は「もっかい行ってきて。レベル上げたらイケルって。な?」という無慈悲なものだった。
勇者アルカンは大人の玩具に身を包み、魔物にコスプレして魔王軍に潜入。
あの手この手で魔王を暗殺すべく、彼は今日も魔王城で楽しく魔物たちと農業や料理に勤しむのだった。
たぶんそんなお話。
主人公 ★★★★☆
サブキャラ ★★★★☆
世界設定 ★★★☆☆
物 語 ★★★★☆
文章構成 ★★★★☆
正直、タイトルとあらすじのネタ臭から期待してませんでしたが、全員キャラがたっていて面白かったです。
シヴァイヌ(笑)の血を引くアヌビス族のポチ子はおバカかわいいし、
魅惑の有翼純魔、リリンの小悪魔お姉さんっぷりも魅力的。
ゴブリン族のチャラいしゃべりや、オーク族のゲスっぷりもまたいい具合にはまってて笑えますw
果たして、勇者アルカンは人類存続の為に自給自足の魔王軍を作れるのかww
てめえらみんな働けよ!③
“おれは抜刀すると、剣の腹でオークの頭をわりと強めに殴りつけた。
「おぎゃんっ!? な、何をするだ、参謀様!?」
「もういいだろ。会議が始まらん。――他のやつもあきらめろ。まだ喉が渇いてるやつは、おれが綺麗に斬ってやるから自分の血でも飲んでろ。腹が減ってるやつは肉を削いでやるから申告しろ。異論は?」アシュに集っていた下位の魔物たちが、一斉にドン引きの表情を浮かべた。
「ブ、ブヒ、自分を喰うなんて、参謀様ってもしかして
狂戦士 ……?」
「やかましいっ!魔物 にだけは言われたくねーわっ! ヒトを呪われた快楽殺戮者扱いするんじゃねえ!」
「プギ!? ごめんちゃい……」弱っ!
別にアシュを助けたかったわけじゃない。こんなくだらない茶番に時間を取られたくなかっただけだ。おれは一秒でも早く、セラトニア王国に帰りたいんだ。
アシュが再び円の中央へと歩み出て、短い両手を広げた。「じゃあ、会議をは~じめ~るよ~!」
そもそも、こいつに被害者意識がないのだからタチが悪い。むしろパシらされて喜んでいたくらいだ。もしかしたら助け船だって余計なお世話くらいに思われている可能性もある。
まあ、魔物なんぞにどう思われようが、どうでもいい話だ。いずれおれはこいつらを皆殺しにせねばならんのだからな。ここ数週間でわかったことと言えば、魔物らは全員、自分さえ楽しければなんでもいいのだ。やることなすこと、すべて遊びだ。
あくび混じりにアシュへと視線を向ける。「本日のギダイは一つだよ。もう少しでねー、南の魔王軍の食べ物はなくなっちゃいます。このままだと来月はこえられません」
ほらな、全然どうでもい――だ、だ、だ、大問題じゃねえかっ!!
あくびの途中で空いた口が塞がらなくなってしまった。「ど、どれくらい残ってんだ?」
アシュが無邪気な笑みを浮かべたまま、くるっとおれのほうを向いた。真っ白な髪がふわりと踊って背中に落ちる。
「えとねー、あと一ヶ月分くらい?」
下半身から力が抜けた。
そもそも魔王軍の主食といえばナマニクだ。それも味つけも何もない純然たるナマニクだ。
おれはこっそり近くの海岸から海水を取ってきて塩を精製して振ったり、たまには魚を釣ってきたり、山で採れる山菜や野菜なんかも食って栄養のバランスを保ってきたが、それらは副菜レベルの分量ですらない。ナマニクがなくなれば、飢える――!
だがナマニクは冬になれば獣が冬眠することから、当然供給は減る。
ただでさえクソマズい上にコレステロールが山盛り溜まりそうな食事を続けてまで潜入していたのに、それすらなくなるだと!? アホか! 死ぬわ!「お、おまえ、そ、そそんな大事なことを、なんでこんな限界近くまで黙ってたのッ!?」
アシュが幼子のように、不思議そうな表情で首を傾げた。
「え~、だって、この季節はいつものことだもん」
おれはアヌビスのポチ子に尋ねる。
「そうなのか?」
「ヘッ、ヘッ、ヘッ、あるかん、さんぽ、さんぽ」尻尾はブン回しているが、散歩に行きたいということ以外はほとんど喋らない。
きっとこいつの祖先のシヴァイヌとかいうやつも、頭はあまりよろしくない犬種だったのだろう。可愛いけど。
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