新任大公の平穏な日常
[コメディ][何気に強い主人公][テンション軽め][時々残虐][魔族たちの日常][キメラ多め]
作者:古酒
ただのしがない魔族の男爵でしかなかったジャーイルは、ちょっとしたアクシデントから魔王に次ぐ大公の一人を倒してしまい、その後継の座に就くことになってしまった。これはそんなジャーイルが、脳筋ばかりの魔族の中で、いかに平穏に暮らすかを目指し過ごした、新任1・2年時の物語。ブラコンで我侭な妹、最強の女王様、女好きの親友、やや変態の魔王様、厳格な家令、無表情な部下等々に囲まれつつ、ジャーイルの平穏な日常は今日も続いていくのであった。
3年目以降を続編「魔族大公の平穏な日常」として書いています。
主人公 ★★★★☆
サブキャラ ★★★★☆
世界設定 ★★★☆☆
物 語 ★★★★☆
文章構成 ★★★★☆
血で血を洗う魔族たちのほのぼのとした日常(笑)
魔族至上、力こそ正義、何かあれば取りあえず殺すの魔族たちに対して、「温和」な主人公ジャーイルが慄きながらツッコミを入れるストーリー……と見せかけて、魔族たち失禁・トラウマレベルのフルボッコをしているのは主人公という、どうしようもなく魔族なお話www バトル物ではなく、あくまでこれが魔族の日常だというのだからこれまたひどいw
おまけに主人公の語り口が軽い軽い。残虐な魔族たちがみんな愛すべき脳筋に見えますw
途中出てくる妹のマーミルが、主人公を振り回す我が儘ヒロインっぽく見えて、読み進めるのがつらかったのですが、まぁ、そんなことはあり得るはずもなく、やはり魔族な兄は魔族でありました。逆にこれで兄はシスコンだと思える方がすごい。
※続編が、「魔族大公の平穏な日常」タイトルで連載されています。
8.残虐は魔族の世の習いと申します……申しますが……
“やばいやばいやばい。
マジで鬼のような強さです。
確かに七大大公なのだから、弱いわけはないのですが、それにしたってアナタもう……
黙って見ていた家臣の幾人かが失神し、失禁し、吐瀉しているのも、無理はありません。
ああ、そうか……たぶん、あれだな。彼らは以前も旦那様のこんな姿を見たことがあるのだな……先代と対決なさった折の旦那様の姿を……
これはあれだな。確かにトラウマ級の強さだな……
私がぼんやりと考えている時でした。「ふ……ふふふふふ……」
ああ、やばい。お嬢様が壊れた。
見るも無惨なボロボロ加減なのに、なんでそんな楽しそうに笑っているのですか、お嬢様。
Sだと思っていましたが、実はMなのですか、お嬢様。
「さすが……おにい……さ…………」
それきり、お嬢様は膝から崩れ落ち、倒れてしまいました。
「おじょうさまーーーー」
私はようやく、お嬢様の許に駆けつけました。
おうう。なんてこったい。
近くで見るとお嬢様の負った傷のひどさがよくわかります。
あの鬼のようなしごきを前に、よくここまで耐えたと褒めてあげたい!
「医療班、早く!」
一応、旦那様の容赦ない指導を目撃してすぐ、呼び寄せておいた数人が、すぐさまお嬢様に駆けつけてきます。「ええと、そこの家僕……」
旦那様の声に、私はビクリと体を震わせました。いつもと同じ、穏やかな声音ですが、それが今となっては逆に恐ろしく感じます。
心情的には恐ろしさのあまり聞かなかったことにしたいですが、無視するなんてことは怖くてできません。
「はい、旦那様」
「名前は?」
「イ……イース、と申します……」
なんでしょう。お嬢様に勝手に剣を教えていたことで、しかられるのでしょうか。「イース、な。お前がマーミルの剣の指導をしているんだよな?」
「は……はい、僭越ながら……」
恐る恐る見上げると、旦那様はいつもの穏やかな表情で、こくりと頷かれました。
「よし、じゃあ、明日からはもっと厳しくしていいぞ。俺のやりようを見てたろ? 手加減はあのくらいでな」
え、手加減なさってたんですか、アレで!?
「あんまり優しくするとつけあがるし、上達の妨げにもなる。欠損さえしなければ咎め立てはしないから、思いっきりぶちのめせ」
やめてください、そんな優しそうな笑顔で、そんな恐ろしいことをおっしゃるのは!
旦那様はシスコンだとお嬢様から聞いていたのですが、これが妹思いだというのなら、世のほとんどの者がシスコンと呼ばれることになるでしょう!
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